個人事業主がレンタルオフィスを借りるメリットは?経費になるかも解説

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近年では、企業に属さずに個人事業主として働く人が増加しています。

クラウドソーシングなどの普及により、ノマドワークが可能な環境が増え、多様な働き方ができる時代になりました。
個人事業主として働く人が増えた事により競争率も高くなっているため、クオリティの高い成果を出すためには適切な労働環境が大切です。

本記事では、個人事業主がレンタルオフィスを借りるメリットやレンタルオフィスを利用する前に知っておきたいこと、利用料金を経費にする際の注意点を解説します。

レンタルオフィスとは?

レンタルオフィスとは?

レンタルオフィスとは、賃貸オフィスのような貸事務所とは異なり、専用スペースを限られた期間・限られた人数で借りることができるサービスで、即入居可能な状態のオフィスです。

従来の賃貸オフィスのように不動産契約ではなく、サービスの利用契約になるため入居のハードルは低く、オフィス設備などの費用を抑えることが可能です。

デスク・椅子などの家具類やオフィスツールなどの備品が完備されていたり、オプションで申し込みができたりするため各自で揃える必要がありません。

レンタルオフィスの専有スペースは、完全個室タイプ・半個室タイプの2種類に分けられます。

また、レンタルオフィスによっては受付サービスを提供しているところもあります。電話代行や秘書代行などを依頼できるため、個人事業主の業務負担の軽減が可能です。

個人事業主やフリーランスがレンタルオフィスを借りるメリット

個人事業主やフリーランスがレンタルオフィスを借りるメリット

個人事業主やフリーランスが、レンタルオフィスを借りるメリットを6つご紹介します。

  • 仕事に集中しやすくなる
  • 低コストでオフィス環境を得られる
  • 法人成り時に事務所として登記が可能
  • 自分が求める働き方を実現しやすい
  • 取引先からの印象がよくなる可能性がある
  • 月々の費用を経費として計上できる

仕事に集中しやすくなる

自宅で仕事をしていると、プライベート空間と仕事の空間が一緒になり集中ができなかったり、家族がいる場合は家族の了承やスペースを確保するのが難しかったりする場合もあります。

レンタルオフィスでは専用の個室スペースが用意されているため、周囲を気にせず仕事に集中しやすくなります。

低コストでオフィス環境を得られる

多くのレンタルオフィスでは、仕事に利用ができるデスクや椅子、複合機などのオフィスツールが揃っているため、低コストでオフィス環境を得られます。

また、従来の賃貸オフィスでは、敷金や礼金などの初期費用が賃料の6~12カ月分となっていることが多いですが、レンタルオフィスでは賃料の1~2カ月分程度で借りられます。

法人成り時に事務所として登記が可能

レンタルオフィスは、法人成り時に事務所として登記が可能です。個人事業主として活動を始め、将来的に法人として会社の設立を想定している場合は、レンタルオフィスを活用するとスムーズに手続きを行えます。

法律的に問題なく法人登記ができますが、稀に登記不可のレンタルオフィスもあるため、事前に運営会社に確認しておくことをおすすめします。

自分が求める働き方を実現しやすい

基本的にレンタルオフィスは、他人と共有しない専用の一室を借りられます。施錠をすれば、仕事に使用するパソコンや書類などを置いたまま帰宅することもできるため、自分が求める働き方を実現しやすいメリットがあります。

無償か有償であるかは運営会社にもよりますが、コーヒーなどを飲める環境がほとんどのレンタルオフィスで提供されています。

取引先からの印象がよくなる可能性がある

レンタルオフィスの多くは、主要駅の近くや繁華街の中心など、立地のよい場所にあります。

ブランド力の高い一等地にあるレンタルオフィスを選べば、名刺やWEBサイトにその住所が記載されるため、取引先からの印象が良くなるなど、個人事業主の社会的信用性の向上に役立ちます。

月々の費用を経費として計上できる

レンタルオフィスを事業に使用している場合は、費用を経費として計上できます。ただし、事業に無関係の費用は経費として計上できないため、経費として計上できるケースと計上できないケースを以下にて確認してください。

経費として計上できるケース

レンタルオフィスの利用料を経費として計上できるかは、オフィスの用途によって異なります。以下のような費用が経費として計上できる費用です

  • レンタルオフィスを借りる際に支払う入会費や事務手数料
  • レンタルオフィスを事務所として借りて業務を行った場合の利用料
  • 貸し会議室の利用料
  • 自宅からオフィスまでの交通費
  • コピー機や複合機の利用料
  • Wi-Fiの利用料
  • ドロップイン利用料
  • カフェ代金

レンタルオフィスによっては、コピー機・複合機などのオフィス機器の利用料がかかる場合があります。

また、会議のためにドロップイン(一時的)で利用した際の利用料や、レンタルオフィス内に設置されているカフェを商談に利用した場合も経費として計上できます。

経費として計上できないケース

レンタルオフィスを経費として計上できないケースは、以下のように事業に関係のない用途で利用した場合です。

  • リフレッシュなどの目的で借りている
  • 私用の打ち合わせなどの利用
  • 趣味で行っている作業での利用

経費とは事業所得を得るために必要なお金を指すため、プライベートで利用している場合は経費として計上ができません。

経費ではないものを経費として計上し申告をした場合、脱税行為に該当します。所得税法第238条第1項および法人税法第159条第1項では、偽りその他不正の行為によって所得税を免れたり還付を受けたりした場合は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処すると定めています。

知らずに経費として計上をした場合でも、申告漏れとして過少申告加算税を支払うことになる場合があるため注意が必要です。

参考:e-Gov法令検索「所得税法

個人事業主がレンタルオフィスを利用する際に知っておきたいこと

個人事業主がレンタルオフィスを利用する際に知っておきたいこと

個人事業主がレンタルオフィスを利用するメリットは、費用を抑えられることや一等地に住所を持つことができるなど多くあります。これからレンタルオフィスを利用しようと考えている方が、事前に知っておくべき注意点を3つ挙げました。

  • セキュリティ面への配慮が必要
  • 雑音などによって集中できない可能性がある
  • 満席になる可能性がある

セキュリティ面への配慮が必要

レンタルオフィスはさまざまな人が出入りをするため、セキュリティ対策を万全にしておく必要があります。セキュリティ対策が万全ではないと情報漏洩や盗難などのリスクがあります。

オフィスの契約をしてからセキュリティの脆弱性に気付いても、対策をするのが難しくなります。安全に業務を行うためにも、利用を検討しているオフィスは内覧をして、専有スペースの施錠や入退室管理など、どのようなセキュリティ対策を講じているのか事前に確認しておくと良いでしょう。

物理的なセキュリティ対策だけではなく、ネットワークのセキュリティ対策も重要になります。フリーWi-Fiがレンタルオフィスの契約者以外でも使用ができる設定になっていないかを確認しておきましょう。暗号キーやSSIDがあるレンタルオフィスなら、比較的に安全性は高いといえます。

また、共有スペースなどを利用する場合は、情報漏洩に注意が必要です。退室する際は機密情報が記載された書類やパソコンなど、忘れ物がないか必ず確認するようにしましょう。

雑音などによって集中できない可能性がある

他の個人事業主の会話やキーボードの操作音・コピー機の音など、さまざまな雑音によって集中ができない可能性があります。集中力が削がれると生産性の低下にもつながる可能性があるため、騒音・防音対策が必要です。

騒音・防音対策に優れたレンタルオフィスであれば、雑音によるストレスは少ないでしょう。

建物の構造によっても音の伝わり方は異なります。吸音材や遮音材が使われている部屋は防音性に優れているため、部屋の建材にも注目してみることをおすすめします。

満席になる可能性がある

個人事業主が利用できるレンタルオフィスは、専用の個室を一名からのプランで用意しているケースが多く、空きがない場合は入居できない可能性があります。

また、レンタルオフィスは専用の個室に加えて、会議室などの共有スペースが設けられています。複数人で利用をする共有スペースはいつでも利用可能ですが、混雑状況によっては満席になることもあるでしょう。会議室などは予約制の場合が多く、希望の日時に利用ができない可能性もあります。

共有スペースを利用する場合は、仕事面での損失を避けるため、空席状況の確認や満席で利用ができない場合の代替手段も用意しておくと良いでしょう。

個人事業主向けのオフィスはレンタルオフィスだけではない

個人事業主向けのオフィスはレンタルオフィスだけではない

自由度の高い労働環境を構築できる個人事業主向けのオフィスは、レンタルオフィスだけではありません。ここでは、仕事場として利用ができる場所を3つ紹介します。

自宅

自宅をオフィスとする最大のメリットは、費用の削減ができることです。オフィスを借りる場合は敷金・礼金に加えて毎月の賃料が発生します。業種にもよりますが、パソコン一台でできる仕事であれば、新たに用意する設備がほぼなく、すぐに起業ができます。

また、通勤時間の節約ができることも自宅をオフィスにするメリットです。オフィスを借りる場合は自宅からオフィスまでの通勤時間がかかります。通勤に時間を取られることに加え、満員電車を利用する場合は通勤だけで疲れてしまうこともあるでしょう。

また、自宅をオフィスにした場合は家賃や光熱費を経費として計上することが可能です。

カフェ

近年ではノマドワークの普及により、電源やWi-Fiを完備しているカフェも多く、仕事場として活用ができます。

自宅に家族やパートナーがいる場合は、作業スペースが確保できなかったり、一人で仕事に集中する時間を確保できなかったりする場合もあるでしょう。趣味のものや気軽に休息が取れる場所がすぐそばにあることで、オン・オフの切り替えができない可能性もあります。その点、カフェを仕事場にすると、家族とは異なる他人の視線が適度に感じられ、目的の業務に自ずと集中できます。

また、カフェは紅茶やコーヒーなどの飲み物や、軽食が充実していることも魅力の1つです。紅茶やコーヒーを飲んでリフレッシュしたり、小腹が空いたときに軽食をつまんだりと、適度にリラックスしながら仕事に取り組むことができるでしょう。

コワーキングスペース

コワーキングとは「Co(ともに共に)」「Working(働く)」と言う、2つの英語からできています。2006年にアメリカのサンフランシスコに開設されたCitizenSpace(シチズン・スペース)が発祥地とされ、日本では2010年頃からコワーキングの概念が浸透してきました。

個人事業主やフリーランス、テレワークなどの人口増加により、コワーキングスペースの利用者は首都圏を中心に拡大しています。

コワーキングスペースは、仕事を行うことをメインで設計されているため、デスクや椅子・セキュリティが整ったインターネット環境・オフィス備品が揃った状態で業務を行えます。

施設によって設備に差があるため、事前に安全かつ目的によって使いたい設備が整っているか確認しましょう。

コワーキングスペースは、月額制と使いたいときに1時間単位で利用ができるドロップインの2種類があります。

レンタルオフィスの利用料を経費にする際の注意点

レンタルオフィスの利用料を経費にする際の注意点

レンタルオフィスを「事業」として利用している場合は、個人・法人を問わず経費として計上できますが、事業に無関係の費用は経費計上ができません。

経費にする際の注意点を3つ挙げましたので、個人事業主はレンタルオフィスの経費計上を確実に実施するようにしましょう。

レシートや領収書を保管しておく

一般的にレシートは購入の証明・領収書は支払いの証明として利用されます。適切に保管し、紛失をしないようにしましょう。

万が一紛失した場合は、領収書の再発行をしてもらうことが可能ですが、日々の細かなレシートや領収書を再発行で集めるのは難しいです。特にレシートは相手方にこちら側の氏名などの記録が残っていないため、再発行の難易度が高くなります。

なお保管期間は、青色申告の場合はその事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間、白色申告の場合には5年間と決められています。後から見てわかるような状態で保管しておきましょう。

勘定科目を固定しておく

レンタルオフィスの利用料の勘定科目は、利用したオフィスのタイプによって賃借料と地代家賃の2つに分かれます。

  • 賃借料:土地や建物・機械などを借りる際に支払う費用
  • 地代家賃:土地や建物を借りる際に支払う賃料

意味が似ているため混同をしがちですが、土地や建物を借りるにあたって土地・建物賃貸借契約を締結しているかどうかが分類の違いになります。

迷ったときはレンタルオフィスの料金制度に注目してみてください。

レンタルオフィスを借りる費用とは別に、Wi-Fiや複合機などのオフィス機器の利用料が別途かかる場合もあります。

Wi-Fiや複合機などのオフィス機器の利用料は、全て賃借料で計上できるため賃借料を使って勘定科目を仕訳した場合は1行にまとめて記帳できます。

地代家賃で仕訳をした場合は、オフィス機器の利用料を地代家賃に含めた仕訳はできません。Wi-Fi利用料を通信料・オフィス機器利用料を賃借料と仕訳するのが良いでしょう。

また、Wi-Fiやオフィス機器以外でも、会議室などを利用した場合は勘定科目を別に仕訳する必要があります。勘定科目は、確定申告を依頼する税理士や会計事務所によって利用する項目が異なります。インターネットで調べたときに、勘定科目や仕訳がサイトによってまちまちなのはこのような事情からです。

なお、レンタルオフィスの利用を継続する際は、同じ勘定科目を使い続けなければなりません。一般的には賃借料を使用して勘定科目を仕訳すると、帳簿に記載する際一行で済みます。

税務署調査に対応できるようにしておく

税務署調査の対象範囲は、申告内容の正確性を確認することです。

税務署調査を受ける際は、決算書・申告書の他、通常3期分の総勘定元帳・現金出納帳・請求書・領収書・預金通帳などの準備が必要になります。従業員を雇用している場合は、給与台帳・社会保険関係の書類・タイムカードなども用意をしておく必要があります。

税務署調査は主に任意調査と強制調査の2種類があります。

任意調査

税務署調査の大半を占め、任意調査という名目ですが調査を拒否することはできません。
調査を実施する旨の連絡があった場合は対応が必須です。

正当な理由なく帳簿書類などの提出を拒むこともできないため、提出を拒否した場合は罰則を科せられる可能性があります。

強制調査

強制調査は事前連絡のない税務署調査で、国税局査察部が実施します。

悪質な巨額の脱税が疑われる場合の調査であるため、高額な取引を行っていない個人事業主などは対象になる可能性は低いでしょう。

故意ではなくても、申告内容に不審な点があれば税務署調査を受ける可能性があるため、日頃から適切に記帳や管理をするなどして正しく申告をすることが大切です。

まとめ

まとめ

レンタルオフィスは、従来の賃貸オフィスを不動産契約するよりも入居のハードルが低く、机や椅子・オフィス機器などが最初から揃っているため初期費用を抑えてオフィス環境を整えられます。

将来的に法人として会社の設立を想定している場合は登記も可能です。個人事業主がレンタルオフィスを利用するメリットは多いため、これからオフィス環境を得ようと考えている方は本記事を参考にしてみてください。