古物商許可を取得したいけれど、初期費用やスペースに関する悩みがある方にとって、レンタルオフィスが1つの選択肢となるかもしれません。しかし、古物商許可をレンタルオフィスで取得する場合、どのような条件や注意点があるのでしょうか。
この記事では、レンタルオフィスで古物商許可を取得する際のポイントや、許可取得のための具体的な手続きについて詳しく解説します。これから古物商の営業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
古物商とは?
古物商とは、中古品や不用品を売買、交換する事業を行う法人や個人のことを指します。この取引は「古物営業法」によって規定されており、古物商として事業を営むには都道府県公安委員会からの許可が必要です。
許可を得ずに古物営業を行うと、罰則が科される可能性があるため、事前に許可を取得することが重要です。近年はSDGs(持続可能な開発目標)の影響もあり、中古品取引が注目される中、古物商の役割はさらに大きくなっています。
また、インターネットの普及により、以前は手間のかかる作業とされていた中古品取引もオンラインでの取引が主流となり、開業のハードルが低くなりました。市場規模も拡大傾向にあります。
古物商の営業所の条件
古物商の許可を取得するためには、営業所を設置する必要があります。では、許可が認められる営業所とは、どのような要件を満たしている必要があるのでしょうか。ここでは、営業所の条件について確認していきます。
中長期的な使用権限がある
古物商の営業所として認められるためには、その場所を中長期的に使用できる権限を持っていることが求められます。中長期的な使用権限とは、営業所を継続的に使用できる確実な権利があることを指します。
例えば、申請者が営業所として使用する物件を自己所有している場合は、この条件を満たしているといえるでしょう。
短期間で契約が終了するような場合や、明確な契約書が存在しない場合は、使用権限が不十分とみなされる可能性があります。したがって、営業所として認められるためには、確実に中長期的に利用できる物件であることが重要です。
古物商として営業する際には、契約の詳細や期間にも十分注意を払い、必要な条件を満たすことが大切です。
独立して管理できる
古物商の営業所として認められるためには、その場所が独立して管理できる構造でなければなりません。具体的には、他者と共有せず、個別に占有できる区画や個室が必要です。
例えば自宅を営業所とする場合、玄関が1カ所だと、複数人で古物商の許可を申請する際に独立性が問題となります。別々の部屋を営業所として申請しても、外見上それぞれの営業所が区別できなければ、独立性が満たされないと判断されます。
賃貸物件の場合、通常は独立性が問題になることは少ないでしょう。しかし、大きなフロアを他の事業者と共有している場合、独立性の要件が満たされないことがあります。
独立性を確保するためには、物件の構造や契約の内容に注意を払い、必要な書類を整えることが重要です。
営業実態が視認できる
古物商の営業所は、実際に営業活動が行われていることが外部から確認できる必要があります。これには、いくつかの要件が含まれます。まず、営業所には管理者が常駐し、日常的に業務を行っていなければなりません。
さらに、古物を保管するスペースが確保されていることも重要です。加えて、古物台帳を適切に管理し、法律に従って取引記録を保持する必要があります。
営業所には「古物商」の標識(古物商プレート)を掲示することも義務付けられており、これにより営業実態を外部から視認できることが保障されます。
これらの条件を満たさない場所、例えばバーチャルオフィスのような実際の物理的な活動が確認できない場所では、古物商の許可は取得できません。
レンタルオフィスで古物商許可は取得できる?
レンタルオフィスで古物商許可を取得できるかどうかは、オフィスの構造や契約形態に依存します。レンタルオフィスにはさまざまなタイプがあります。
古物商許可を取得するためには、まず営業所が「独立して管理できる場所」であることが必要です。そのため、単なるパーティションで区切られたスペースでは許可が下りないことが多いですが、独立した個室を利用できる場合は条件を満たす可能性があります。
また、契約形態も重要です。短期的なレンタル契約ではなく、中長期的な使用が可能な契約であることが求められます。さらに、古物営業を行うためにはオフィスの運営会社からの承諾が必要となる場合があり、この承諾書を取得することも1つのハードルとなるでしょう。
実態が確認できない場合は古物商の許可はもらえない
バーチャルオフィスでは、古物商許可を取得できません。古物商許可を得るためには、物理的に存在し、個別に占有できる営業所が必要だからです。バーチャルオフィスは、住所や電話番号などの情報を借りるだけで実際の作業や管理が行われていないため、営業実態が確認できません。
古物商の営業所には、営業活動が行われていることが視認できる必要があります。さらに、古物商が実際に取引先や顧客が訪れる場所であることを確認し、トラブルが発生した際にその事業者に迅速にアクセスできるかを重視しています。
このため、営業所としての物理的な拠点がないバーチャルオフィスでは、これらの条件を満たせず、古物商許可の申請が受理されません。
古物商の手続きにおける注意点
古物商の手続きを進める際には、レンタルオフィスを契約する前に、警察署の担当者に直接古物商許可の取得可否について確認することが重要です。
レンタルオフィスの運営会社は、営業の観点から契約を促進する傾向があります。しかし必ずしも正確な情報とは限りません。運営会社の言葉をうのみにすると、後で許可が下りずに手間や費用が無駄になることがあります。
また、過去の基準が、現在の基準と適合しない場合もあるため、注意が必要です。事前に、最新の情報をしっかりと確認しておきましょう。契約前にレンタルオフィスの図面や契約書案を持参して、警察署の担当者と相談しながら契約を進める方が安全です。
レンタルオフィスで古物商の営業所とするメリット・デメリット
ここでは、レンタルオフィスを古物商の営業所にするメリットとデメリットを紹介します。レンタルオフィスでの営業を検討している方は、事前にチェックしてください。
メリット
レンタルオフィスを古物商の営業所として利用する場合、メリットは以下の通りです。
- 初期費用の大幅な削減
- 電気や水道の整備が不要
- 電話対応や宅配の受け取りが可能
通常の賃貸オフィスでは、保証金や前払い賃料などが10〜12カ月分必要です。しかし、レンタルオフィスでは1〜3カ月分の保証金で契約が可能です。そのため、資金的な負担を大きく軽減できます。
レンタルオフィスは電気や水道といったインフラの整備や内装が全て整っており、すぐに業務を開始できます。
また、電話対応や宅配の受け取りなど、追加の事務サービスを利用することで、日常業務の効率化が図れるでしょう。必要な業務を外部に委託できるため、より集中して本業に取り組めます。
デメリット
レンタルオフィスを古物商の営業所として利用する場合、デメリットは以下の通りです。
- 坪単価が比較的高額
- 長期間の利用は高コスト
- ビジネスの規模が拡大する際には不向き
レンタルオフィスは、ビルのオーナーからテナントを借り、そのスペースを利用者に貸し出しています。運営側はビルのオーナーに支払う賃料以上の収益を上げる必要があるため、坪単価が高く設定されがちです。
初期費用が低い利点がある一方で、長期間の利用を考えるとコストが積み重なる可能性があります。短期的にはコスト削減の恩恵を受けられますが、長期にわたると割高感が否めません。
さらに、レンタルオフィスは一般的に小規模なスペースが多いため、ビジネスの規模が拡大する際には不向きです。
レンタルオフィス以外の営業所候補を3つ紹介
レンタルオフィス以外なら、どこを営業所として選べばいいか疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、古物商許可申請に適した営業所の候補を3つ紹介します。
自宅
基本的には、自宅を古物商の営業所として申請することは可能です。しかし、自宅が賃貸物件の場合は一般的に住居専用の契約で、営利目的での使用が制限されていることが少なくありません。
自宅を営業所にするメリットは、コストを大幅に削減できる点です。営業所を賃貸する場合、年間で数十万から数百万円の費用がかかりますが、自宅を営業所とすることでこれらの費用を節約できます。初期費用や月々の経費を抑えられるのは大きな魅力です。
デメリットとしては、プライバシーの問題が挙げられます。古物商をインターネットで運営する場合、氏名や住所、電話番号などの個人情報を公開する必要があります。そのため、自宅が営業所になると、プライバシーが侵害される可能性があるでしょう。
友人宅
自宅以外に、友人宅を営業所として利用することも考えられます。基本的に、古物商許可の営業所は自宅である必要はなく、自宅から離れた場所にも設定できます。そのため、友人宅を営業所として利用することも理論的には可能です。
しかし、営業所の管理者についての規定があり、管理者は営業所に常勤しなければなりません。友人宅が営業所になる場合、そこに常にいる管理者を選定する必要があります。申請者が管理者となる場合、営業所までの距離が片道2時間以内であることが目安とされています。
さらに、友人宅を営業所として利用するには、当然ですが友人の了承を得ておく必要があります。友人がその役割に対して快く応じてくれるか、また管理責任を担えるかを確認しておくことが重要です。
賃貸店舗
賃貸店舗を古物商の営業所にすることは、通常問題ありません。賃貸店舗は商業利用が前提であり、契約時に営業所としての使用に関してオーナーから承諾を得ることが不可欠ですが、大抵の場合は問題なく許可が下りるでしょう。
賃貸店舗を営業所にする主なメリットは、長期的な視点で見た場合のコスト効率です。レンタルオフィスと比較して、長期間にわたる契約で安定した固定費を抑えられるため、経済的なメリットがあります。
賃貸店舗を営業所にするデメリットとしては、初期費用の高さが挙げられます。店舗の契約には、家賃の数カ月分の保証金が必要な場合が多く、営業開始時にかなりの経済的負担がかかる可能性があるでしょう。
古物商については警察署や行政書士に相談しよう
古物商許可の申請を進める際には、警察署や行政書士に相談することが重要です。どちらも異なる役割を果たしており、適切なサポートを受けるためには、各機関の特徴を理解しておくことが大切です。
古物商の許可申請自体は、警察署で行います。申請を提出する窓口で、管轄する警察署に相談できますが、営業所の所在地を管轄する警察署に限られます。
行政書士は申請書類の作成や手続きを代行する専門家です。古物商許可の申請についてもサポートを行っており、無料で相談を受け付けている事務所もあります。行政書士に相談する場合は、古物商許可の取り扱いに特化した専門の行政書士を選びましょう。
まとめ
レンタルオフィスは初期費用が抑えられ、契約も柔軟であるため、起業家や小規模事業者にとっては大変魅力的な選択肢です。
レンタルオフィスを利用して古物商許可を取得することは可能ですが、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。もし候補となる物件をお探しの方は、ぜひハブスペにご相談ください。
レンタルオフィスを利用して古物商の営業を検討する際には、これらの要点を踏まえた上で、最適な選択をしましょう。