近年、柔軟な働き方の普及に伴い、シェアオフィスの需要が急増しています。シェアオフィスとは、複数の企業や個人が共用するオフィススペースで、初期費用を抑えつつ快適な環境で仕事を進められます。
本記事では、シェアオフィスの基本的な特徴やレンタルオフィスなど似ている施設との違い、利用する際のメリットについて詳しく解説します。シェアオフィスの利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
シェアオフィスとは?定義や用途を紹介
シェアオフィスとは、複数の企業や個人が共用するオフィススペースのことを指します。従来のオフィスと異なり、初期費用や長期契約が不要で、柔軟に利用できる点が特徴です。
主な用途としては、スタートアップ企業やフリーランス、リモートワーカーが仕事を行う場として利用されます。また、異業種間の交流を行う機会が豊富にあるため、新たなビジネスチャンスを創出するきっかけを作れることもあるでしょう。
シェアオフィスには、一般的に会議室、インターネット環境、キッチン、ラウンジなどの共有設備が設けられています。すでに必要な設備が整っているため、自身で準備する必要がない点が大きなメリットだと言えます。加えて、コミュニティ形成を促進するため、イベントが開催されているシェアオフィスも少なくないため、人脈を広げたいとお考えの方はぜひシェアオフィスを利用してみてください。
シェアオフィスと似ている施設との違い
シェアオフィスと似ている施設として、次の4つの施設が挙げられます。
- レンタルオフィス
- コワーキングスペース
- バーチャルオフィス
- サテライトオフィス
これらのオフィスとシェアオフィスとの違いについて、以下でそれぞれ見ていきましょう。
レンタルオフィスとの違い
レンタルオフィスは、シェアオフィスと似ていますが、シェアオフィスがコミュニティ重視で自由な交流を促すのに対し、レンタルオフィスはビジネスに専念できる環境を提供している点に違いがあります。
レンタルオフィスの大きな特徴として、主に個別のオフィススペースを短期間から借りられる点が挙げられます。利用者は専用のデスクやスペースを確保できるため、プライバシーが保たれ、集中して業務に取り組むことが可能です。
設備面では、高速インターネットや会議室、電話ブースなどが整っており、ビジネスに必要な基本機能が揃っています。契約期間や料金体系が柔軟で、月単位や日単位での利用が可能なため、スタートアップ企業や個人事業主、プロジェクトベースで活動するフリーランスに適しています。
コワーキングスペースとの違い
コワーキングスペースは、シェアオフィスと非常に似ていますが、特にフリーランスやリモートワーカー向けに開放的な作業環境を提供する点が特徴です。オープンなレイアウトで、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まるため、異業種間での情報交換や交流の機会が豊富にあります。
設備面では、高速インターネット、共有の会議室、カフェスペースなどが整備されており、快適に作業に集中できる環境が整っています。さらに、定期的にワークショップやセミナー、ネットワーキングイベントが開催され、スキルアップやビジネスチャンスの拡大も期待できるでしょう。料金も比較的低めに設定されており、気軽に利用できる点も魅力です。
バーチャルオフィスとの違い
バーチャルオフィスは、物理的なオフィススペースを持たずに、住所や電話番号などのビジネス機能を提供するサービスです。主なサービス内容として、ビジネス用住所の提供、郵便物の受け取りおよび転送、電話応対サービスなどがあります。
特に、物理的なオフィスが不要なリモートワーカーや、小規模なスタートアップ企業にとって、初期費用を抑えつつプロフェッショナルなイメージを維持できる点が魅力です。
一方で、実際の作業スペースが必要な場合や、社員同士の直接的なコミュニケーションが求められる場合には、バーチャルオフィスだけでは対応できないため、他のオフィス形態と併用するケースもあります。用途に応じて、最適な施設を選ぶようにしましょう。
サテライトオフィスとの違い
サテライトオフィスは、本社から離れた場所に設置された支社や拠点のことを指します。シェアオフィスが複数の企業や個人が共有するスペースであるのに対し、サテライトオフィスは特定の企業が自社専用として利用するスペースです。
本社と同等の設備やインフラを備えたサテライトオフィスがあることで、企業は地理的な制約を超えて人材を活用でき、地域ごとの市場開拓や顧客対応が効率的に行えます。また、通勤時間の短縮やワークライフバランスの向上にも寄与し、社員の満足度や生産性の向上につながります。サテライトオフィスを設けることで、本社の規模を小さくできるメリットもあるのです。
シェアオフィスのメリット
シェアオフィスを利用することで、次のようなメリットが得られます。
- 初期費用を抑えられる
- 好立地でも費用を抑えて借りられる
- ランニングコストがリーズナブル
- 法人登記や住所利用などが可能な場合がある
それぞれのメリットについて、以下で解説します。
初期費用を抑えられる
シェアオフィスの大きなメリットの一つは、初期費用を大幅に抑えられる点です。従来のオフィス契約では、敷金や礼金、内装工事費用など多額の初期費用が必要です。一方、シェアオフィスでは、敷金や礼金が必要ない上に必要な設備や家具が既に整っているため、入居時の費用が不要または低額に設定されているのです。
また、短期間の契約も可能なため、事業の規模や期間に応じて柔軟にオフィススペースを利用でき、無駄なコストを削減できます。
このように、初期費用を抑えることで、スタートアップ企業や小規模事業者にとって経済的な負担を軽減し、事業の立ち上げをスムーズに進めることが可能です。
好立地でも費用を抑えて借りられる
シェアオフィスは、都心の好立地に位置する物件でも比較的低コストで利用できる点が魅力です。例えば、東京の主要ビジネスエリアやアクセスの良い場所にオフィスを構えたい場合、従来の賃貸契約では高額な家賃がネックとなります。しかし、シェアオフィスでは既存のビル内にあるスペースを共有するため、個別に契約するよりもコストを抑えられます。
また、好立地にあることで、クライアントや取引先からの信頼感が向上したり、社員の通勤がスムーズになり、働きやすい環境を提供できたりするなど、多くのメリットもあるのです。
このように、好立地でありながら費用を抑えられるシェアオフィスは、多くの企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
ランニングコストがリーズナブル
シェアオフィスは、月額料金に基本的なサービスが含まれているため、ランニングコストをリーズナブルに抑えられます。具体的には、電気代や水道代、インターネット接続費用、清掃費用、さらには会議室や共用スペースの利用も料金に含まれていることが多く、追加で発生する費用が少ないのが特徴です。
さらに、設備のメンテナンスやセキュリティ対策もオーナー側で行うため、管理業務にかかるコストや手間も削減できます。結果として、企業は資金をコアビジネスに集中して投資でき、コストパフォーマンスに優れたオフィス運営が実現します。
法人登記や住所利用などが可能な場合がある
シェアオフィスの中には、法人登記やビジネス住所としての利用が可能なところもあります。法人登記をシェアオフィスの住所にすることで、プライバシーを保護できる上、郵便物の受け取りや転送サービスも提供されているため、重要な書類や連絡事項を確実に管理できます。
このように、法人登記や住所利用の機能を活用することで、ビジネスの信頼性を高めつつ、柔軟な運営が実現できます。そのため、信頼性のあるビジネス住所を必要とするスタートアップ企業などに重宝されるでしょう。
シェアオフィスのデメリットや注意点
一方、シェアオフィスには次に挙げるようなデメリットや注意点もあります。
- 雑音や話し声などで作業に集中できない可能性がある
- 料金が高くなるケースもある
- 内装などの変更はできない
- セキュリティ面のリスクがある
それぞれの点について、以下で見ていきましょう。
雑音や話し声などで作業に集中できない可能性がある
シェアオフィスは多くの企業や個人が共用するため、雑音や話し声が頻繁に発生する可能性があります。オープンスペースの場合、隣のデスクからの音が気になりやすく、集中力が削がれる原因となることがあります。特に静かな環境での作業を必要とする業務には不向きな場合があるでしょう。
また、会議室の利用時にも他の利用者との間で相互に音が漏れることがあり、プライバシーが守られにくい可能性があります。このような点が生産性の低下やストレスの増加につながる場合もあるため、利用前にオフィスのレイアウトや防音対策を確認することが重要です。
料金が高くなるケースもある
シェアオフィスは柔軟な契約条件や充実した設備が魅力ですが、利用頻度や選ぶプランによっては料金が高くなる場合があります。特に、好立地のオフィスや高品質な設備を備えた施設では、月額費用が高額になることがあります。また、追加サービスやオプションを利用すると、基本料金に加えてコストが増加することも考えられるでしょう。
そのため、想定よりも料金が高くならないようにするため、費用をしっかりと見積もり、必要なサービスのみを選択するなど、コストを抑える工夫が求められます。
内装などの変更はできない
シェアオフィスは既に整った内装や設備が提供されているため、利用者が自由に内装を変更することは困難です。企業のブランディングに合わせたカスタマイズが制限されるため、独自のオフィス環境にしたい場合には不便を感じることがあります。壁の色を変えたり、家具を追加・変更したりすることも許可されていない場合が多く、個々のニーズに完全には対応できないことがほとんどでしょう。
特に特定のレイアウトが必要な場合には、シェアオフィスの既存のスペースでは対応しきれないことがあります。このため、内装の自由度が重要な場合は、他のオフィス形態を検討する必要があります。
セキュリティ面のリスクがある
シェアオフィスでは複数の企業や個人が同じスペースを共有するため、セキュリティ面でのリスクに注意が必要です。共用スペースや共有設備を利用する際に、情報漏洩やデータの不正アクセスのリスクが存在します。
例えば、会議室の利用後に第三者によって機密情報が見られる可能性や、共有のプリンターを通じて情報が漏れるリスクがあります。また、入退室管理が不十分な場合、外部からの不正侵入を防止できない可能性があるでしょう。
重要なデータを扱う企業やセキュリティが厳重に求められる業務を行う場合、十分なセキュリティ対策が必要であるため、利用前にセキュリティ体制を確認し、必要に応じて追加の対策を講じることが重要です。
シェアオフィスに向いている職種やシーン
シェアオフィスに向いている職種やシーンとして、次の2つが挙げられます。
- クリエイティブな職種
- 個人事業主やフリーランス
それぞれの職種がなぜシェアオフィスに向いているのかを以下で見ていきましょう。
クリエイティブな職種
シェアオフィスは、デザイナーやライター、アーティストなどのクリエイティブな職種に最適です。オープンなワークスペースや多様なバックグラウンドを持つ利用者との交流が、新たなアイデアの創出を促進します。
また、共有スペースや会議室を活用したブレインストーミングが容易で、プロジェクトの進行がスムーズになるでしょう。さらに、定期的に開催されるイベントやワークショップを通じて、スキルアップや交流の機会も豊富に提供されています。
このように、クリエイティブな職種のプロフェッショナルがインスピレーションを得ながら効率的に業務を進められる環境が整っていると言えるでしょう。
個人事業主やフリーランス
シェアオフィスは、個人事業主やフリーランスにとって理想的な環境です。専用のデスクやオフィススペースを低コストで利用できる上、共用の設備やサービスが充実しているため、初期費用を抑えつつ効率的に業務を進められます。
また、他の利用者との交流を通じて、新たなビジネスチャンスや交流の機会が生まれることも魅力です。柔軟な契約条件や営業時間により、自分のライフスタイルに合わせてオフィスを利用できるため、働き方の自由度が高まります。さらに、法人登記や住所利用が可能な場合が多く、ビジネスの信頼性向上にも寄与します。
このように、シェアオフィスは個人事業主やフリーランスが快適かつ効果的に仕事を進めるための最適な環境が提供されていると言えるでしょう。
シェアオフィスの利用に向いていないケースもある
一方、次に挙げるようにシェアオフィスの利用に向いていないケースもあります。
- 税理士や行政書士などの士業
- 占有スペースが必要な職種
- 機密情報を扱う職種
それぞれのケースがシェアオフィスの利用に向いていない理由について、以下で解説します。
税理士や行政書士などの士業
税理士や行政書士などの士業には事務所を開設する際の条件が設けられており、シェアオフィスではその条件を満たせない可能性があるのです。というのも、税理士や行政書士などの士業は個人情報を取り扱う職種であるため、情報漏洩を防止するための占有スペースをもった事務所を構える必要があります。
しかし、シェアオフィスは複数の利用者が同じ空間を共有するスタイルであるため、情報漏洩を防止するための占有スペースが確保できず、事務所として必要な条件を満たすことができないのです。そのため、税理士や行政書士などの士業が事務所を構える場合は、占有スペースを確保できるレンタルオフィスの利用をおすすめします。
占有スペースが必要な職種
税理士や行政書士などの士業以外の職種でも、占有スペースが必要となる場合があり、シェアオフィスはその条件を満たさないことがあります。例えば、製造業や研究開発、医療関係などでは、特定の機器や設備を常時設置して使用する必要があります。
しかし、シェアオフィスでは、スペースをカスタマイズしたり専用設備を設置したりすることが困難です。また、大型の機器を設置するための電力供給や安全基準を満たせない場合がほとんどでしょう。このような理由から、占有スペースが必要な職種は、業務効率や品質を維持する上で、できればシェアオフィスではなく専用の賃貸オフィスを確保する必要があります。
機密情報を扱う職種
機密情報を扱う職種にとって、シェアオフィスの利用はセキュリティ面で大きなリスクを伴います。
例えば、金融機関や人材派遣業などは、クライアントの機密情報や企業の重要データを取り扱うため、士業と同様、事務所に情報漏洩を防止するための占有スペースを確保する必要があります。しかし、シェアオフィスではこの条件を満たせないため、士業のみならず、金融機関や人材派遣などの機密情報を扱う職種は、そもそもシェアオフィスが利用できない場合がほとんどでしょう。
シェアオフィスの選び方のポイント
どのシェアオフィスを利用するか選ぶ際は、以下のポイントで比較してみると良いでしょう。
- コスト
- 規模
- 立地
- 設備
- オプション
コスト
シェアオフィスの選択において、コストは重要な要素です。月額料金には何が含まれているかを確認し、予算に合ったプランを選びましょう。初期費用や追加料金の有無もチェックし、長期的なコストを比較することが大切です。
規模
オフィスの規模は、現在のビジネスニーズだけでなく、将来の拡大も考慮して選びましょう。チームの人数や必要なスペースに応じて、適切な広さを確保できるかを確認します。柔軟に拡張できるオプションがあると、事業成長に合わせてスムーズに対応できます。
立地
立地はビジネスの利便性に直結します。交通の便が良い場所やクライアントにアクセスしやすいエリアを選ぶことで、業務効率が向上します。また、周辺環境や近隣の施設も確認し、社員が快適に働ける環境かどうかを判断しましょう。
設備
シェアオフィスの設備は業務の効率に大きく影響します。高速インターネット、会議室、プリンター、キッチンなど、必要な設備が整っているかを確認しましょう。また、快適な作業環境を提供するための家具や照明も重要です。自分の業務に適した設備が揃っているかをチェックしてください。
オプション
オプションとして、郵便物の取り扱いや専用ロッカーの利用などを検討してみるのも良いでしょう。自分のニーズに合ったオプションを選ぶことで、快適に利用できます。また、入退室管理システムや監視カメラの有無など、セキュリティ対策が万全に行われているシェアオフィスであれば、安心して利用できるでしょう。
まとめ
シェアオフィスは、コスト効率や柔軟性を求める企業やフリーランスに最適な選択肢です。初期費用の削減や好立地の利用、充実した設備など、多くのメリットを得られます。
一方で、利用に適さない職種やセキュリティ面の注意点も存在するため、レンタルオフィスなどの他の形態の施設を含めて、どの施設が適しているのかを検討することがおすすめです。自分のニーズに合ったオフィスを見つけ、柔軟で効率的な働き方を実現しましょう。