弁護士としての経験を積んだ後、独立開業を目指す方々は多いでしょう。しかし、自身の事務所を設立するには、大きな初期投資が必要となります。
この初期費用を抑制することで、開業時のリスクを最小限にすることが可能となります。そのため、レンタルオフィスの活用が有効な選択肢となります。
本稿では、レンタルオフィスを利用して弁護士事務所を開業する際のメリット、オフィスの選び方、そしておすすめのオフィス5選を紹介します。これらの情報は、開業を計画している弁護士の方々にとって、有益な参考材料となるでしょう。
目次
レンタルオフィスやシェアオフィスで弁護士事務所を開業できるのか
レンタルオフィスやシェアオフィスを利用して弁護士事務所を開業することは、法的には可能です。弁護士法にはレンタルオフィスでの開業を禁止する規定はなく、法に定められた要件を満たすことができれば、開業は許可されます。
弁護士法第23条には、「秘密保持の権利及び義務」が明記されており、弁護士は職務上知り得た秘密を保持する義務があります。レンタルオフィスやシェアオフィスは多くの人々が利用するため、情報漏洩のリスクがあります。
そのため、レンタルオフィスでの開業を検討する際には、以下の点に注意が必要です。これらは神奈川県の「法律事務所の届け出」に基づくものです。
- 郵便物の受け渡しにミスが生じないような管理体制があるか
- 周囲のレンタルオフィス使用者に会話内容が聞こえないような配慮があるか
- 事件記録等の保管場所は適切か
- 電話番号やFAXが事務所専用のものであるか
これらの条件を満たしていれば、レンタルオフィスやシェアオフィスでの弁護士事務所の開業は可能となります。
弁護士がレンタルオフィスで開業するメリット
以下の表は、弁護士がレンタルオフィス・賃貸オフィス・自宅で開業するメリットとデメリットについてまとめたものです。
メリット | デメリット | |
レンタルオフィス(シェアオフィス) |
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賃貸オフィス |
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自宅 |
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ここからは、レンタルオフィスで開業するメリットとデメリットについて、1つずつ解説していきます。
素早く事業をスタートできる
レンタルオフィスを利用する最大の利点は、事業の迅速な開始が可能であることです。自身の事務所を設立する場合、設計や内装のリフォームなど、時間を要する作業が必要となります。
しかし、レンタルオフィスではこれらの手間が省かれ、契約後すぐに事業を開始することが可能となります。また、オフィス用品やインターネット回線が既に設置されているため、追加の設備投資や工事が不要です。
好立地な住所を使用することでブランディング効果が期待できる
好立地な住所を利用することで、弁護士事務所のブランディングにも繋がります。
自宅を事務所にしたり、場所を借りて弁護士事務所を開業したりすると、顧客からの信頼度は必ずしも高くはありません。あまり聞いたことのない地名だと、不安に感じる方もいるでしょう。
しかし、駅前であれば利用しやすく、誰もが知っている地名であれば安心感を与えることもできるでしょう。レンタルオフィスは、駅前や一等地など好立地である場合が多いため、ブランド価値の高い住所で事業を始めることができます。
場所によってはお値段安く高級感のあるオフィスをかまえられる
レンタルオフィスの場所にもよりますが、価格は安く抑えつつも高級感のあるオフィスをかまえられるというメリットがあります。
弁護士事務所は、信頼性が重要です。高級感のあるオフィスであれば信頼感を得やすいでしょう。
そのため、オフィスの高級感を重視する方も多いのではないでしょうか。
もし都内の一等地に事務所を構えようとすれば、賃貸などでも初期費用でかなりの金額が必要です。しかし、レンタルオフィスやシェアオフィスであれば、価格を抑えつつも一等地の住所を利用することが可能です。
弁護士がレンタルオフィスで開業するデメリット
弁護士がレンタルオフィスで開業することで、素早く事業がスタートできたり、好立地な住所の利用でブランディングが期待できたりというメリットがありました。
しかし、レンタルオフィスでの開業はメリットばかりではなく、デメリットもあります。
ここからはメリットに続いて、弁護士がレンタルオフィスで開業するデメリットについて解説していきます。
オフィスによっては室外に声が聞こえてしまうリスクがある
弁護士がレンタルオフィスで開業するデメリットの1つ目として、オフィスによっては室外に声が聞こえてしまうリスクがあることが挙げられます。
レンタルオフィスは、個人の持ち物ではないため、多くの利用者が使用できる環境です。個室内では問題ないかもしれませんが、オープンスペースなどは、他の利用者と共同で使用することとなります。
また、防音対策が万全であることを確認しておく必要があるでしょう。会話の内容が漏れてしまう場合には、防音パネルや防音シールなどが利用できることをレンタルオフィス会社に確認することも手段の1つです。
セキュリティ対策が厳重でない場所もある
デメリットの2つ目として、セキュリティ対策が厳重でない場所もあるという点が挙げられます。
これは、先ほど紹介したデメリットの、室外に声が聞こえてしまうという点も同様ですが、秘密保持の義務があるため、顧客のプライバシーが保護されない場合は、弁護士事務所に適しているとは言えません。室外に声が漏れること以外にも、個室にカギがかけられないというケースも考えられます。カギをかけられない場合には、事件記録のような重要な書類を外部の人に見られる可能性があります。
個室にカギが無かったり、誰でも自由に出入りできるレンタルオフィスは避けた方が賢明です。オフィスによっては、利用時にカードキーが必須である場合もあり、そのようなオフィスを選ぶことで、セキュリティ対策を万全にすることができるでしょう。
そのため、防音対策だけではなく、個室の施錠が可能であるかを確認しておくことも重要なポイントといえます。
費用負担が大きくなる可能性もある
3つ目のデメリットとして、使用料が大きくなる可能性があることが挙げられます。
レンタルオフィスでは、提供しているサービスや設備の料金が使用料に含まれていることから、費用負担が増える場合があるため、事前に確認しておくことが大切です。
自分で弁護士事務所を開業するには、初期費用としてまとまった額が必要となります。一方、レンタルオフィスでは設備費が使用料に含まれている点を考慮し、使用料が膨らんでもトータルでそれほど問題にはならない場合もあるしょう。
資金の少ない初めの間はレンタルオフィスで弁護士事務所を開業して、資金を集めてから、自分で事務所をかまえるというのも1つの方法です。
弁護士がレンタルオフィスを選ぶ際のポイント
レンタルオフィスで弁護士事務所を開業する際に、どのような点に注意するべきか気になる方も多いでしょう。
ここからは、弁護士がレンタルオフィスを選ぶ際のポイントについて解説していきます。
立地・賃料
弁護士がレンタルオフィスを選ぶ際のポイントの1つ目として、立地と賃料が挙げられます。
レンタルオフィスで開業するメリットでもお伝えしたのですが、立地が良いと信頼性につながります。名刺やホームページなどに住所を記載する場合に、一等地であるだけである程度の信用を得ることが可能です。
顧客のアクセスのしやすさも重要であるため、駅から近いだけではなく、複数の路線を利用できると良いでしょう。
しかし、立地だけに注目していると、賃料が高くなってしまいます。賃料が高すぎると、レンタルオフィスによる開業のメリットである、コストの削減効果がかき消されてしまいます。
立地と賃料の両方を考慮し、コストパフォーマンスが高いレンタルオフィスを選びましょう。
信頼感が持てる内装や外観
レンタルオフィスを選ぶ際のポイントの2つ目として、信頼感が持てる内装や外観であることが重要です。
顧客は、信頼できる弁護士事務所を選びたいと思うでしょう。弁護士事務所が清潔感に欠けていたり、ビル自体がすたれていると、信頼感にも影響を与えます。そのため、外観・内観ともに清潔感があり、快適に過ごせるようなレンタルオフィスを選ぶことがおすすめです。
オフィスによっては、観葉植物を置いていたり、机などに木材が使われていることでリラックス効果を得られたりと様々な工夫が施されています。レンタルオフィスの特徴を踏まえたうえで、検討してみましょう。
セキュリティ
弁護士事務所で最も重要だといっても過言ではない、セキュリティ面については必ず確認しておきましょう。
周囲に声が漏れない防音性、防犯カメラの有無、オフィスの施錠の可否などについて確認しておくことが必要です。レンタルオフィスは、他の利用者の出入りが多いため、セキュリティは重要です。
レンタルオフィスによっては、カードロックを採用していたりドアが通常より厚いなど、セキュリティやプライバシーに配慮しているオフィスもあります。
【弁護士実績あり】おすすめオフィス5選
レンタルオフィスの種類はとても多く、選ぶことが大変だと思う方も多いでしょう。
そこで、ここからは弁護士が選んだおすすめオフィス5選について紹介していきます。
「エグゼクティブセンター」(東京・横浜に拠点あり)
まず1つ目のおすすめオフィスとして、「エグゼクティブセンター」が挙げられます。
「エグゼクティブセンター」は、15か国以上に展開している世界的なレンタルオフィスで、28年以上サービスを提供しており、アジアで3番目に大きなワークスペース会社です。日本国内では、東京・横浜に拠点があり、立地の良さが特長です。新丸の内センタービルや目黒アルコタワーなど、一等地にあります。運営会社の規模が大きいという点と、28年以上のサービス提供の実績から、信頼できるレンタルオフィスだといえます。
24時間アクセスが可能であるため、時間外で資料を取りに行けないといったこともありません。また、通信上のセキュリティ対策も万全なので、通信による情報漏洩の心配も少ないでしょう。
「ビジネスエアポート」(東京・横浜に拠点あり)
2つ目のおすすめは、「ビジネスエアポート」です。
「ビジネスエアポート」は東京・横浜に拠点があり、好立地です。渋谷・新橋・六本木・丸の内など東京都内に多くの拠点があります。各オフィスで内装が異なっており、それぞれに清潔感のある内観となっています。
さらに、「ビジネスエアポート」の特徴としては、福利厚生サービスがついていることがあげられます。福利厚生の内容は、スポーツジム・映画チケット・飲食・宿泊施設などの割引が受けられるというものです。
社名プレートを受付前やビルのメインエントランスに設置できるため、顧客が訪問の際に迷う事もないでしょう。
「リージャス」(全国170拠点)
3つ目のおすすめレンタルオフィスは、「リージャス」です。
「リージャス」は、国内最多の全国170拠点を有するレンタルオフィスです。東京都内だけではなく、各地にレンタルオフィスがあるため、都内以外でレンタルオフィスを探している方におすすめです。
多くのオフィスタイプがあり、弁護士事務所に適したレンタルオフィスを探すことも可能です。また、短期間での契約も可能なため、合わないと感じればすぐに解約できます。
受付スタッフは、日米バイリンガルであるため、外国人の顧客に対応する際にも役立つでしょう。
「The Hub」(関東・大阪拠点あり)
4つ目のおすすめレンタルオフィスは、「The Hub」です。
「The Hub」は、直営と提携をあわせると、国内最大の773施設の利用が可能です。首都圏の一等地かつ駅から近いという好立地でありながら、低料金を実現しています。
「The Hub」は、内装に統一感があり、どの拠点でもモスグリーンをベースとしたデザインです。モスグリーンは、集中力を高め、リラックス効果が得られる色だといわれています。有料のサービスでは、ミーティングBOXという個室の利用が可能であったり、ティーサーブが利用できたりするため、顧客の訪問がある際には便利でしょう。
「サーブコープ」(東京・名古屋・大阪・福岡に拠点あり)
5つ目のおすすめレンタルオフィスは、「サーブコープ」です。
「サーブコープ」は、東京・名古屋・大阪・福岡など五大都市圏に拠点がある、好立地なレンタルオフィスです。。東京以外での一等地の住所を利用したい方におすすめです。
フリードリンクが充実しており、エスプレッソマシンやドリップコーヒーが用意されています。カップやグラスは紙コップではなく、ガラスや陶器でできているものが使用されています。
内装は海外をイメージさせるおしゃれな雰囲気であり、仕事へのモチベーションが上がるでしょう。その他のサービスとしては、契約している都市圏以外での個室を月5日間まで無料で利用できます。そのため、広範囲で顧客対応ができる利便性があります。
まとめ
本記事では、弁護士事務所の開業にレンタルオフィスを活用する際の注意点や、オフィス選びのポイントについて解説しました。
弁護士事務所では、顧客のプライバシーを守ることが大切であるため、セキュリティの充実したレンタルオフィスを検討することが重要です。また、信頼感を得るためにも、立地や清潔感が大切です。
弁護士事務所の開業を考えている方は、本記事で紹介したレンタルオフィスの選び方をもとに、弁護士事務所に適したレンタルオフィスを選びましょう。
記事監修者:幸谷 泰造
市ヶ谷東法律事務所代表弁護士の幸谷です。
これまで10年以上にわたって弁護士として法律に携わってまいりました。
法律事務所を経営しており、士業のオフィス事情や法的手続きに詳しいです。
一等アパートを保有する不動産投資家としての側面も有しており、不動産の売買や賃貸も得意としております。
不動産の売買や賃貸に関する情報を法律面からサポートすることを心掛けています。