人材紹介事業に興味がある人でも、人材業界の市場規模について「なんとなくは知っているが、わからない点が多い」という人は多いはず。
この記事では、これから人材紹介会社への転職を考えているビジネスマンの方や人材紹介ビジネスを起業したいと考えている経営者・個人事業主の方などに向けて、人材紹介事業の過去〜現在〜未来予測を解説していきます。
目次
人材紹介事業のこれまで
人材紹介事業の市場規模は、時代背景や景気の影響を受けながら変動してきました。
ここでは「人材派遣」「人材紹介」の2つの観点から人材紹介事業のこれまでを振り返っていきます。
人材派遣
2019年度の人材派遣業市場を見てみると6兆6,800億円(前年度比4.7%増)と急拡大しています。
この背景には、就労人口の減少や働き方改革を起因とする労働力不足があります。さらに主力の一般事務派遣も好調維持の一つの要因となりました。また、現在でもITエンジニアや介護系人材は需要の高まりに対し人材の供給が追いつかない状況が続いています。
人材紹介
人材紹介市場は人材派遣以上に高い成長率で推移してきましたが、2020年は新型コロナウイルスによる不景気で、多くの企業は新卒採用の活動を停止しました。中途採用においても未経験者・ポテンシャル採用を完全にストップ。経験者や即戦力となる人材に限った採用が残るのみで全体の採用数はコロナ前に比べ大きく低下しました。
人材業界の全体図
現在の人材業界の各企業の状況、直近の動きについて下記にまとめています。
人材紹介会社一覧
上場している国内大手の人材
紹介会社には下記のような企業があります。
株式会社リクルートホールディングス
パーソルホールディングス株式会社
株式会社パソナグループ
株式会社ジェイエイシーリクルートメント
株式会社キャリアデザインセンター
株式会社フルキャストホールディングス
これら大手企業に共通している点として、
上場企業でありIRを公開していますが、全ての企業でコロナ禍に入り業績が落ちています。しかし、2022年に入ると業績が回復しているのです。
実は2009年のリーマンショック時にも全ての企業で同じ現象が起きています。このことから人材業界は非常に景気の影響を受けやすいと言えるでしょう。
今後の市場予測
2020年度の人材ビジネスの市場規模は、事業者売上高ベースで前年度よりも減少し、2022年度は回復傾向にあります。
また、再就職支援事業では業績低下による整理解雇や希望退職を募ることを実施した企業の影響により市場拡大の可能性が高まっています。
人材紹介は景気の影響を受けやすい
人材業界は景気の影響を強く受けます。なぜなら、企業にとって採用とは投資であるためです。
採用した人材は最初は育成、研修の期間に入ります。利益を生み出したり、コストを削減したりと実際に戦力になるのは半年〜1年以上かかるケースは少なくありません。先行き不透明な時代となれば、まずは今の社員に留めておくことがベター。多くの企業はこのような判断から採用活動を停止し、こういった背景が人材業界にも影響してしまうのです。
どこの業界を支援するかで大きな差がある
景気が落ち込んだ市場では、支援する業界や職種の選定が重要となります。
例えば、コロナ禍において製造業や営業職の支援は非常に厳しくなっています。しかし、IT業界におけるシステムエンジニアやITコンサルタントなどはコロナ禍でニーズが高まった職種なので、ビジネスチャンスがあると捉えられます。
コロナ前とコロナ後の人材紹介市場
コロナ前とコロナ後で市場がどのように変化したのか解説していきます。
コロナ前
コロナ前における人材紹介市場は成長期を迎えていました。従来の新卒一括採用や求人広告のニーズが人材紹介にマッチし、さらなる市場の拡大が期待されていたのです。
コロナ後
新型コロナウイルス感染症による不景気により、人材紹介事業が受けた影響は求人掲載数・スタッフ稼働数・紹介成約数の減少です。
特に外食・小売などのサービス業、自動車や部品、工業用品などの製造業からの影響は大きなものとなっています。採用の変化としては、未経験・若手ポテンシャル層の採用に消極的になる動きが全体的にみられます。
こういった背景により、人材ビジネス事業者は2020年3月頃から徐々に業績不振に陥りはじめ、撤退する事業者も多くいました。緊急事態宣言が発出された4~5月頃にピークが訪れましたが、それ以降も採用、採用中止を繰り返す企業が非常に多く存在しました。
徐々に市場は回復していますが、感染拡大前と同水準には戻っていないのが現状です。また、海外進出していた日系企業の事業撤退や計画していた新規事業の取りやめ、M&Aの中止のケースもみられました。
忙しい経営者に代わり、優秀なオンラインアシスタントが仕事をサポート【タスカル】
総括と今後伸びることが予測される2つのキーワード
日本は少子高齢化と人口減少により国内市場だけでは限界があります。
これからは世界でビジネスを展開しより多くの顧客を獲得することが重要となってきます。またグローバル化を効率的に進めていくためにテクノロジーはかなり重要な意味を成しています。詳細を解説していきます。
デジタル案件の市場成長性
ここ10年だけでも世界はテクノロジーの進化で大きな変革を見せました。スマートフォンの普及によるオンライン決済、SNSの普及、5Gによる高速通信などはその象徴です。近年ではIT業界だけでなく、全産業がデジタル化を迫られています。
デジタル化を担う人材を獲得していくことができれば、人材紹介事業において今後も安定的な成長が見込めるでしょう。
グローバル案件の市場成長性
ビジネスやエンターテイメント、外交など様々な分野でグローバル化は急速に進んでいます。
近年では、テクノロジーの力で世界中の人と高画質、高音質でビジネスをすることも可能になりました。こうした背景から英語や中国語が使える人材はこれからよりニーズが高まっていくでしょう。同時に人材紹介市場においてもグローバル案件、外資系企業への興味・関心が高まっています。このニーズを満たすことができれば多くの採用決定を生み出すことが可能です。
まとめ
日本における人材紹介市場は、景気の影響を受けやすいという特徴があります。参入こそ難しくないものの、継続は大変で、コロナ禍では撤退する事業者も少なくありませんでした。いかなる景況においても、ビジネスチャンスを掴み取る判断力が試される業界です。
しかし、企業・求職者からダイレクトに感謝をしてもらえる社会貢献度の高いビジネスである事も確かです。興味がある方はぜひこの世界に足を踏み込んでみてください。その時には想像以上の学びや驚きの世界が広がっていることでしょう。