近年、新型コロナウイルスによる脅威やリモートワークの普及に順応するため、賃貸オフィスでは多様化が求められています。
「手軽に、近場で仕事ができるオフィス環境が欲しい」と、事業者から期待が高まると同時に、フレキシブルオフィスの利用者が急増しました。
しかし、レンタルオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルオフィスの規模では手狭に感じる事業者も…。
とはいえ、オフィスを新設するとなれば、多額の初期費用が掛かります。コストの負担が大きくなればなるほど、事業の経営リスクは高まることに…。
また、実際にオフィスが使えるまでには、内装工事の打ち合わせや施工により2~3カ月ほど日数が必要です。
当然、その期間も賃料は発生します。 「初期費用を抑えて、スタッフが気持ち良く働けるハイグレードなオフィス環境が欲しい」 このような需要に応えるべく、スタートアップ企業やベンチャー企業を中心に人気を集めているのが「セットアップオフィス」です。
セットアップオフィスを利用することで、事業者は手軽に初期費用を抑えて高レベルなオフィス環境が手に入ります。
そこで、この記事ではセットアップオフィスが持つメリット・デメリットについて解説します。最後まで読んで頂くことで、セットアップオフィス選びの失敗を防ぐことができるようになりますよ。
目次
セットアップオフィスとは?
セットアップオフィスとは、言わば内装に高レベルのリノベーションが施された状態で貸し出す独立オフィスです。 その特徴から、現在のベンチャー企業やスタートアップ企業を中心に人気を集めています。
セットアップオフィスのPOINT |
|
一般オフィスとセットアップオフィスの違い
現在のオフィス賃貸は、大きく2つの形態があります。まずは、それぞれの特徴についてまとめてみました。
- まっさらな何もない状態で借り受ける、従来の専属オフィス賃貸
- 事前にオフィス設備を完備している、フレキシブルオフィス賃貸
一般的なオフィス賃貸は何もない状態からオフィス作りが始まるため、膨大な費用が掛かります。その反面、事業者の自由にオフィスが作れるメリットも。また、独立した専属オフィスを貸切れるため情報の機密性に優れています。
一方、フレキシブルオフィスは、原則的に内装などの変更はできません。オフィス設備も、現状あるものに限られます。そのため、手軽で初期費用を抑えることはできますが、自由が利きにくいデメリットもあります。また、共同スペースでの利用者も多く、社内の機密保持には一定の注意が必要です。では、セットアップオフィスはというと、その答えは双方の中間を指し示しています。
セットアップオフィスは、予めオフィスレイアウトが完成しているため、会議室やエントランスなどを造作する手間や費用が掛かりません。そのため、契約後すぐに入居できます。
ただし注意点として、執務室の造作やオフィス什器の搬入は必要です。※一部のオフィスでは不要な場合もあります。事前にご確認ください。
また、セットアップオフィスでは、独立した専属オフィスを借り受けられます。フレキシブルオフィスと違い、社内の機密保持においても優れています。
セットアップオフィスの魅力
- レイアウト図に悩まなくて済む
- 初期の内装工事費が安い
- 直ぐに入居できる
- 専属オフィスのため機密性が高い
各オフィスの特徴
オフィス種類 | 初期費用 | 機密性 | 自由度 |
一般専属オフィス | ✖高い | ◎高い | ◎高い |
フレキシブルオフィス | ◎安い | △低い | ✖低い |
セットアップオフィス | 〇比較的安い | ◎高い | △普通 |
居抜き物件にはないハイグレードなオフィス設備
造作付き物件ということでは、居抜き物件もセットアップオフィスも違いはありません。しかし、その中身は大きく異なっています。
居抜き物件は、あくまで他社の残り物に過ぎません。そのため、オフィスの型が古いなどの理由から使用感が悪いこともしばしば。
対してセットアップオフィスは、オフィス設備の充実を強みとしているため、オーナー自らがオフィス作りに尽力。プロの考案した最新鋭の設備が揃えられているため、利便性に優れた機能的で使い勝手の良いオフィスに仕上げられています。
また、ラグジュアリー感の高いハイグレードなオフィス内装もセットアップオフィスの魅力のひとつです。
このような豪華で機能的なオフィスを、格安の初期費用で借り受けられることが居抜き物件とセットアップオフィスの大きな違いであると言えます。
居抜き物件 |
|
セットアップオフィス |
|
なぜ、セットアップオフィスが人気を集めているのか?
セットアップオフィスが人気を集める要因として、以下の3つが仮定として挙げられます。
- 機動力に長けた柔軟なオフィス形態
- 初期費用が安く、原状回復の手間が軽い
- コロナ渦によるオフィス形態の多様化
入退去の柔軟さが評価される時代
冒頭でも述べましたが、2022年現在、新型コロナウイルスによる脅威からオフィスでは多様化が求められています。中でも重要視されているのは、入退去の柔軟性です。
例えば、多くの大手企業ではオフィスの分散化が実施されています。他にも、小規模事業者においては、シェアオフィスを活用するなどしてオフィスの縮小移転が対策として取られています。そのため、近年ではオフィスの在り方を見直すと同時に、移転・新設する企業が増加しました。
実際に、帝国データバンクによる特別企画:首都圏・本社移転動向調査(2021 年 1-6 月間速報)によると、半年間で186社もの企業が首都圏外へ本社を移転させていることが分かります。
引用元:帝国データバンク 首都圏・本社移転動向調査 2ページより
つまり、時代は必要に応じて柔軟にオフィス形態を変えられる利便性を求めています。そのため、入退去の手間が軽いセットアップオフィスに注目が集まっているのです。
原状回復の手間が軽く、W賃料の支払いを防げる
一般オフィスの退去時は、原状回復のためレイアウトを元のまっさらな伽藍洞に戻す必要があります。さらに、契約を解約する場合は3ヶ月~6ヶ月前ほど日数を必要とし、借主はこの期間も賃料を支払わなければなりません。
一方セットアップオフィスは、事前に準備されたパーティションなどの造作を崩す必要がないため、原状回復の手間が緩和されます。また、契約の解約申請も短くて済むため、移転先を含めたW賃料の支払い負担を減らすことができます。
ただし、オフィスによっては高額の設備を使用しているため、修繕費が高額になることも。退去時のトラブルを減らすためにも、設備の取り扱いには注意が必要です。
一般オフィス |
|
セットアップオフィス |
|
コロナ渦によるリモートワークの拡大
コロナ渦の影響でリモートワークが拡大すると同時に、オフィスの在り方を見直す企業が増加しました。それに伴い、各企業では時代に順応するために、オフィスを分散化させるなどの対策が取られています。
結果、企業の期待に応えるべくして、様々なオフィス戦力が時代と共に生み出されました。その最たるものが、フレキシブルオフィスやセットアップオフィスです。
これらのオフィスは、比較的短期での契約を可能としたり、撤去時の負担を減らしたりと入退去の身軽さに工夫が施されています。そのため、一時的なオフィスの移転を検討している企業にもおすすめです。
ただし、フレキシブルオフィスは比較的少人数での利用に特化しています。そのため、一部の企業では、オフィスの規模に物足りなさを感じることも。また、人員が増加したことで、現状のオフィスが手狭に感じている企業もいるのではないでしょうか。
とはいえ、一から新しく賃貸オフィスを新設すると、5年以上の定期契約を強いられることも。加えて、移転先と旧店舗の賃料や初期設備投資など、多額の費用が必要です。
このような状況を鑑みると、今後の人員計画に明確な解を見つけられないまま、オフィスの規模を変更することはおすすめできません。
しかし、セットアップオフィスであれば移転の負担が軽くリスクも小さくて済むため、一考の余地ありです。
セットアップオフィスのメリット
セットアップオフィスの特徴は、ハイグレードなオフィス環境を手軽に利用できることです。これにより、企業は以下のような恩恵を受けられます。
セットアップオフィスのメリット
- 初期費用の削減
- スタッフのモチベーションアップ+リクルートの採用率が向上
初期費用を抑えられる
通常、オフィスを新設するとなれば多額の初期費用が発生することは必然。ところが、セットアップオフィスを利用することで、初期費用を大幅に抑えることができます。
オフィスの新設には、以下のような初期費用が必要です。
- オフィス契約費用
- 内装工事費
それぞれの内訳をまとめてみました。
オフィス契約費用の内訳 |
|
内装工事費 |
|
参考までに、一般オフィスの内装工事費は坪単価で10万~30万ほど必要と言われています。例えば、50坪のオフィスであれば1,500万円(50坪×30万)もの内装工事費が発生することも…。
しかし、セットアップオフィスは予めレイアウトが完成しているため、これらの費用を大幅に削減できます。そのため、初期費用に悩むスタートアップ企業を中心に、セットアップオフィスは人気を集めています。
スタッフのモチベーションアップ人材開発につながる
ラグジュアリー感の高い内装は企業の価値を高め、優れたオフィス環境は業務の生産性を向上させます。
実際に海外の大手企業では、イノベーションやインスピレーションは豊かな環境でこそ生まれると、オフィスに様々な工夫を施しています。
Google東京オフィス
引用元:OFFICE SNAPSHOTS Google’s Newest Tokyo Offices
また、セットアップオフィスが流行り始めた理由のひとつに、採用活動の強化が挙げられます。ハイグレードで感度の良いオフィスは人材採用にも期待が持てると、多くの企業から高い評価を得ています。
実際に、株式会社フロンティアコンサルティング「オフィス環境に関する調査」を見ると、リクルーターがオフィス感度の良さを重要視していることが分かります。
下図は、リクルーター400名に実施された、就職活動時にオフィス環境をどの程度重視するかについてのアンケート結果です。こちらの結果では、オフィス環境を重視すると答えたリクルーターが90%以上にもなっています。
引用元:株式会社フロンティアコンサルティング「オフィス環境に関する調査」
ハイグレードなオフィス内装を持つセットアップオフィスを取り入れることで、企業価値が高まり優秀な人材採用に期待が持てます。さらに、スタッフのモチベーションが高まることで生産性の向上にもつながることでしょう。
参考:求めるオフィスは「快」!?9割以上の就活生がオフィス環境を重視!
セットアップオフィスのデメリット
高機能かつハイグレードなオフィス内装の代償として、セットアップオフィスにはいくつかの注意点があります。
効率的なオフィス運用につなげるため、事前に注意点もしっかり把握しておきましょう。
セットアップオフィスの注意点
- 一般オフィスと比べて賃料が高額
- 内装を自由に変更できない
一般オフィスと比べて賃料が高額
セットアップオフィスは、一般オフィスと比べて賃料が坪単価で5,000円ほど高くなっています。その理由は、オフィスオーナーが負担する内装工事費を賃料に上乗せして企業に請求しているためです。
これにより、セットアップオフィスは一般オフィスと比べて「ランニングコストが高く、初期費用が安い」という特徴を持っています。
とはいえ、内装工事費には膨大な費用が掛かります。中には、1,500万円(50坪×30万)もの費用が発生することも。そのため、ランニングコストを差し引いても、セットアップオフィスには十分なコストメリットがあります。
さらに、セットアップオフィスの内装工事費は、坪単価で30万~50万もの金額が掛けられていることが一般的です。つまり、50坪のセットアップオフィスでは2,500万円(50坪×50万)もの金額をオーナーが負担していることに。そのため、一般オフィスと比べて賃料が上がることは必然とも言えるでしょう。
内装の変更に制限がある
セットアップオフィスは「会議室」「エントランス」「執務室」「ラウンジ」などのオフィスレイアウトが予め完成した状態で貸し出されます。※ただし、執務室の造作やオフィス家具の搬入は必要であるケースが一般的です。
それゆえに、一から作らなくても良いメリットはあるものの、事前に用意されているものしか利用できないデメリットも。そのため、企業の状況に合わせてオフィス内装の変更(各ルームの追加や拡張)はできないことが一般的です。
失敗を防ぐためには、契約前に自社の状況とオフィスレイアウト(会議室の数や広さは、オフィスの規模は人員数や業務内容に対して適切かなど)が合っているか、念入りに調査しましょう。
セットアップオフィスに適した企業とは?
セットアップオフィスは、小・中規模のベンチャー企業やスタートアップ企業を中心として人気を集めています。人気の秘密は、入退去の手間が軽く機動力に優れている点です。
セットアップオフィスは、一般オフィスと比べて身軽にオフィスを移すことができます。そのため、コロナ渦でオフィスの場所や規模を固定しにくいスタートアップ企業におすすめです。
また、知名度や実績のないスタートアップ企業が、立地の良い一等地にオフィスを構えることで企業価値の向上にも期待ができることでしょう。他にも、ハイグレードなオフィス設備による恩恵として人材採用にも期待が持てるため、人員増加を検討しているベンチャー企業にもおすすめです。
小・中規模のベンチャー企業やスタートアップ企業
繰り返しになりますが、セットアップオフィスは、ベンチャー企業やスタートアップ企業におすすめなオフィス形態です。
しかし、坪数や面積の問題で大規模企業には不向きです。セットアップオフィスの広さは、一般的に坪数で30~50坪の広さになっており、大規模な100坪クラスのオフィスは少なくなっています。
その原因は、100坪クラスのオフィス内装をリノベーションすると、オーナー側の採算が取れなくなるためです。改装費を回収するには、賃料を上げざるを得ません。しかし、賃料が上がれば上がるほど利用者は離れてしまいます。
その結果、セットアップオフィスの収容人員数は、フレキシブルオフィス以上・一般オフィス以下となっています。
比較的短期間での利用を検討している企業
セットアップオフィスは、3年以内に移転を考えている企業に適しています。その理由は、およそ3年でコストブレイクになるためです。
セットアップオフィスは初期費用が安い反面、月額賃料が高い傾向にあります。それゆえに、10年以上の長期利用であれば、一般オフィスを借り受ける方が結果として費用を抑えられます。
また、セットアップオフィスは原状回復の手間が軽いため、通常のオフィスと比べて身軽に退去できます。そのため、一時的な移転オフィスとしても、セットアップオフィスは適しています。
都心部でおすすめのセットアップオフィス運営会社3選
ここでは、弊社がおすすめするセットアップオフィス会社を3つ紹介します。是非、参考にしてみてください。
都心部でおすすめのセットアップオフィス運営会社
- サンフロンティア賃貸
- ValueOffice
- SOHO東京
サンフロンティア賃貸
サンフロンティア賃貸は、ハイグレードなオフィス内装が売りのセットアップオフィスです。
「出社が楽しみになるオフィス」をコンセプトに掲げ、オフィスワーカーの満足度を追及。そのため、サンフロンティア賃貸の内装工事費は、坪単価で40万円前後も掛けられています。
また、200件以上ものセットアップオフィスを取り扱っており、10坪以下の小規模から100坪を超える大規模オフィスまで対応可能です。
サンフロンティア賃貸のセットアップオフィス情報は、こちらからどうぞ。
ValueOffice
ValueOfficeは、株式会社FRSが運営する居抜き物件・セットアップオフィスを専属に取り扱う専門サイトです。
ValueOfficeでは、幅広い規模のオフィスが取り扱われており、10坪以下の小規模から200~300坪を超える大規模のオフィスまで取り扱われています。
ValueOfficeのセットアップオフィス情報は、こちらからどうぞ。
SOHO東京
引用元:SOHO東京 ホームページより
SOHO東京は、株式会社トランスリアルが運営する居抜き物件・セットアップオフィスを専属に取り扱う専門サイトです。
SOHO東京では、小・中規模の物件が豊富に取り扱われています。中には、25㎡ほどのワンルームもあり、単身での利用にもおすすめです。
SOHO東京のセットアップオフィス情報は、こちらかどうぞ。
まとめ
新しくオフィスの新設を検討している企業にとって、初期費用の壁は大きいことでしょう。
言わずもがな、初期費用が増えれば増えるほど回収のリスクは高まります。とはいえ、オフィスレベルが低いと企業の信頼低下に直結することも。また、新たな人材採用に影響を及ぼす恐れもあります。
高レベルなオフィス内装を格安の初期費用で手に入れるには、セットアップオフィスが最適です。加えて、セットアップオフィスは原状回復の手間が軽いため、退去にも手間が掛かりません。
ただし注意点として、セットアップオフィスはランニングコストが高い傾向にあります。そのため、1年~3年程度の比較的短期での利用をおすすめします。
具体的な費用計算やコストブレイクの分岐点にお悩みの方は、弊社までご連絡ください。弊社では、無料でセットアップオフィスのご相談を承っております。まずは、お気軽にお問い合わせください。