【コワーキングスペース運営者談あり】コワーキングスペースの市場規模は?

 

近年、働き方の多様化により、増加するフリーランスや副業ワーカー、起業家などがコワーキングスペースを利用するに伴い、東京都内を中心に成長し続けているコワーキング市場規模。
今後の展望やビジネスチャンスの可能性が気になる方も多くいらっしゃると思います。
そこで、コワーキング市場のこれまでの状況と今後の展望について調査してみました。

 
 
目次
1.これまでの伸び率と現状
2.なぜ伸びているのか?
3.今後の展望
4.まとめ
 
 

この記事の要約
2017年以降、都内、特に千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区で急増し、全国でも大都市を中心に増加傾向。
今後も2023年まで約10%の伸び率で安定的に増加する見込みです。
課題としては、ワーカー側の需要が非常に高いのに比べ、企業側が需要に追い付いいない現状があります。
今後、企業側がメリットを理解すれば、導入率がさらに高まることが期待できるでしょう。

1.これまでの伸び率と現状

実はは、コワーキングスペースの正確な設置数を把握するのは、簡単ではありません。レンタルオフィス、サテライトオフィス、シェアオフィス、など似たような言葉がたくさんあり、「コワーキングスペース」のはっきりした定義が難しいため、統計によってもその数字はマチマチです。

【表:東京都23区のコワーキングオフィス開設面積と開設数の推移】
(引用:CBRE「コワーキングオフィス-新たな働き方のプラットフォーム」2018年10月9日)
 
上記の表は、2018年9月時点でのコワーキングオフィスの開設数で、東京都23区で346拠点あるとの調査結果が出ました。表を見ると、2009年から増加傾向を見せ始め、2017年から急増しているのが分かります。
 
次に、全国を対象としたエリア別設置数を見てみましょう。
国土交通省は毎年「テレワークセンター」に関する調査を行っていますが、都道府県別・東京都23区別に示した設置数が以下の通りです。
 
 
【図:全国における分布状況】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(引用:国土交通省都市局都市政策課「テレワークセンター事例集」2017年3月
 
 
全国的に見ると、東京都、大阪府、神奈川県、福岡県、愛知県、北海道、兵庫県の順に設置数が多く、各地の大都市を中心に設置数が多いことが分かります。
また、東京都内では、港区、渋谷区、千代田区、中央区、新宿区の順で設置数が圧倒的に多いことが分かります。
これらのエリアにあるビジネス圏、商業圏で急増しています。しかし、弁護士事務所や保険会社など、セキュリティーを重視する業種の密集地域では需要が薄いといった指摘も見られます。
 
東京都では、インキュベーション施設や地域密着型シェアオフィスに対して、2015年度より助成金を出し、シェアオフィスの増加を促しています。
こうした取り組みも、近年の増加に大きな影響を与えていると言えるでしょう。
 
 
また、人からみた利用状況・利用意識については以下の調査結果があります。
 
【表:平成30年度テレワーク人口実態調査
  2017年度 2018年度
雇用型就業者のテレワーカー割合 14.8% 16.6%
自営型就業者のテレワーカー割合 22.2% 24.0%
今後、テレワークを実施してみたい(非テレワーカー) 39.8% 44.7%
(引用:国土交通省「「テレワーク」を活用して働く人の割合、年々上昇しています!~平成30年度テレワーク人口実態調査結果を公表します~」2019年3月28日)
 
 
雇用形態にかかわらず、前年度よりテレワーカーの割合が増加していることが分かりますし、まだテレワークをしていなくも、今後、テレワークをしてみたいと考える人が増えているということも分かりました。
働く側の人たちの意識も徐々に変わってきていると言えるでしょう。
 

2.なぜ伸びているのか?


理由は様々ありますが、まずは働き方改革による働くスタイルの多様化が一番に挙げられるでしょう。
ある意味、フリーランスや、副業をする人が増加するのと比例関係にあるとも言えるかもしれません。

また、近年では大手企業のコワーキング産業への参入が際立っています。
三井不動産は2017年から法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」を展開し、2018年8月の段階で全国31拠点に達しています。
同時に、海外のコワーキングスペース企業の参入・展開も目立ち始めています。
中でも大手の「WeWork」は2019年10月時点で全国33拠点、「リージャス」は2020年4月時点で170拠点も展開しています。
多大な資金を有している分、各地の一等地に大規模なコワーキングスペース展開が可能になっているわけですね。

さらに、前述した通り、テレワークという働き方が拡大していることが挙げられます。
フリーランスはもちろん、会社が導入して雇用者をテレワークに移行させているという動きがみられます。

 

ここで、コワーキングスペース「DIGIMA BASE」運営者である小林さんの見解をご紹介したいと思います。

Q.コワーキングスペース市場はなぜ伸びている?

小林さん
東京都が2025年までに創業率10%アップを目標に掲げ、民間企業にもインキュベーション施設運営で助成金を支援するなどの方策を積極的に行っています。こうした都の取り組みによってコワーキングスペースが増え、市場が拡大しているように見えるということもあると思います。
同時に、働く人たちの独立志向が強まったり、ネットが普及する中で、場所に縛られない働き方が求められるようになったことも事実です。
この点についても、こうした動きを予測してコワーキングスペースが設置されていったという背景はあるでしょう。いずれにせよ、コワーキングスペース側と働き手が相乗効果のような形で市場を拡大させているのかもしれません。
 
 

3.今後の展望

 IT専門調査会社である IDC Japan 株式会社が2019年6月に出した予測調査によると、オリンピック開催までは急増していき、それ以降はゆるやかな増加傾向が続くとのことでした。2018年~2023年の年間平均成長率は10.1%と具体的な数値まで出しています。
 
(出典:IDC「国内サテライトオフィス市場予測を発表」2019年6月6日)
 
 
ただし、2020年に入ってからはコロナ感染症拡大や、オリンピック延期といった事態があり、上記の予測に少し変化がある可能性があります。
こうした事態を受け、在宅勤務やテレワークの導入が急速に進められるようになってきました。必ずしも会社に通勤して働く必要のない、働き方の多様性が見直され、改めてコワーキングスペースの価値も認められてきているのではないでしょうか。
また、会社員のみならず、大学生の企業選びや子育て復帰の方など、ワーカー側からはこうしたリモートワークの強い要望があるにもかかわらず、企業側が柔軟に対応できていない、という現況課題も見えてきました。
現段階では、リモートワークのメリットを理解している自治体や一部の大手企業、スタートアップ企業、個人が主なコワーキングスペースの利用主体となっています。
今後は、デメリットや課題点を解決して大手企業などでもコワーキングスペースの利用を取り入れていくべきでしょう。
 
最後に、「DIGIMA BASE」小林さんの示唆的なご意見も紹介したいと思います。
 

Q.今後コワーキングスペースの市場が成長するには?

小林さん
現段階では、都心に集中していますが、今後は分散させていく必要があるでしょう。今後コワーキングスペースを開設するのであれば、各地方への設置がオススメです。ただし、現状では、密集地域である大都市であるからこそコワーキングスペースが成り立っているという事情もあります。各地方でコワーキングスペースの価値を認識してもらうという活動から始める必要があると思います。

4.まとめ

今回の記事では、コワーキングスペースが2010年度以降に増加し、今後も増加することを確認しました。
今後の戦略としては、コワーキングスペースの密集地域ではなく、まだ設置数少ないエリアが狙い目かもしれません。
さらに、企業にとっては、リモートワークを導入するかどうかが、人材確保のカギとなっていくでしょう。
ぜひ、積極的にコワーキングスペースの開設や導入を検討してみましょう。
 
いかがでしたでしょうか?
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